■【スピンオフ】消えた男 ~ ゲイリー・マティアスの失踪
今回は、「ユーバ・カウンティの5人組」のスピンオフで、当事件で唯一「死」さえ確認されていない男、ゲイリー・マティアスに焦点を当てます。(「ユーバ・カウンティの5人組」の詳細についてはこちらをどうぞ)
他の4人が凍死や餓死という「静止」の中で果てたのに対し、彼だけは吹雪の山中で「運動」を続けていました。
その足跡を辿ると、単なる遭難では説明のつかない、一人の男の凄まじい執念と狂気が見えてきます。
― 狂気を飼い慣らした兵士 ―
ゲイリーは他の4人と違い、かつてドイツ駐留米軍に所属していた元兵士でした。
そこで統合失調症を発症し、「精神科への入院」と「薬物療法」を条件に不名誉除隊となります。
しかし彼は軍で厳しいサバイバル訓練を受けていました。
事件の夜、車内に残されていたのは、彼の命綱であるはずの「精神安定剤」でした。
薬が切れた彼を襲ったのは、単なる混乱ではありません。
海外の検証記録によれば、彼は以前、薬が切れた際に数キロの距離を、幻覚に追いかけられながら裸足で走り抜けたという異常なエピソードを持っていました。
雪山という極限状態で、彼の軍人としてのサバイバル本能と、薬切れによる被害妄想が最悪の形で融合した可能性があります。
― 「死の部屋」の支配者 ―
車から30キロ離れたトレーラーハウスに辿り着いたのは、恐らくゲイリーが仲間を率いた、あるいは引きずってきた結果です。
ここで、最も戦慄すべき謎が浮かび上がります。
なぜテッド・ウェイハーは、目の前に山のように積まれた食料に手を触れずに餓死したのか。
一つの仮説は、ゲイリーがそれを許さなかったというものです。
軍隊式の規律、あるいは妄想に支配されたゲイリーにとって、備蓄食料は「今は食べてはいけないもの」だったのかもしれません。
衰弱していくテッドの傍らで、ゲイリーだけは軍人としての知識を使い、器用に別の保存食を摂取して生き延びていた痕跡があります。
彼は死にゆく仲間を看取っていたのか、それとも自分の「物語」の観客として監禁していたのでしょうか。
― テッドの靴と、消えた足跡 ―
テッドが息絶えた後、ゲイリーは奇妙な行動に出ます。
自分のテニスシューズを脱ぎ捨て、凍傷で腫れ上がっていたであろうテッドの革靴を履き、雪の中へ歩き出したのです。
当時の捜索資料によれば、トレーラー周辺には、彼が雪の中で生活していたことを示す排泄物の跡が点在していました。
仲間が全滅した後も、しばらくの間、たった一人で死の空間に留まり、生活を続けていたのです。
しかし最終的に、彼は「出口」を求めて深い雪の中へ消えました。
― 48年目の空白 ―
ゲイリーの遺体は、広大な捜索範囲のどこからも見つかりませんでした。
現場からさらに数キロ離れた場所に親戚が住んでおり、そこを目指したのではないかという説もあります。
しかし、軍の訓練を受けた男が、なぜそのルートを誤り、跡形もなく消えたのか。
海外の検証者はこう締めくくります。
ゲイリーは山で死んだのではない。
彼は自分の書いた「生存」という名の狂気に飲み込まれ、今もどこか別の場所を歩き続けているのだ、と。
― 山の中のヒッチハイカー ―
さらに、海外のオカルトスレッドや地元の噂話では、失踪から数年後、近隣の山道で目撃談が語られています。
1980年代初頭、事件現場からほど近い峠道で、ボロボロの格好をした男がヒッチハイクをしていた。
車を止めた運転手が男を乗せようとしたが、男の目があまりにも虚無的で、人間のものではないと感じ、恐怖のあまりそのまま逃げ去ったというのです。
ゲイリー・マティアスは、もはやこの世の理から外れた存在となり、静かな山の中でひっそりと歩き続ける「怪異」として記憶されているのかもしれません。
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